ぼくが参加しているYouTubeチャンネル『ちゃんばらスタジオ』で、
黒澤明監督作品、三船敏郎さん主演の『椿三十郎』のラストシーンの殺陣について考察した動画をアップしました。
椿三十郎のラストシーンといえば、三船敏郎さんと仲代達矢さんによる一騎討ちの殺陣が展開されたシーンで有名です。
その中で三船敏郎さんが使った技の名前が『逆抜き不意打ち斬り』。
一瞬の早斬りと、血しぶきが激しく噴射したことで、国内国外を問わず大きなインパクトを残しました。
この記事では、動画の内容を文章に起こし、さらに詳細に解説させていただきます。
実際にぼくもシーンの動きにチャレンジして、さらにシーンの分析と考察を行いました!
椿三十郎のラストシーンの技は『逆抜き不意打ち斬り』
椿三十郎のラストシーンにおいて三十郎を演じた、三船敏郎さん(1920〜1997)が披露した技。
その名が『逆抜き不意打ち斬り』という名前だそうです。
鞘を納めた状態から、一瞬で敵役の仲代達矢さんの胸元をバサっと斬り裂き、血が噴き出したことで有名になりました。
椿三十郎の本編は知らなくても、このシーンだけは見たことがある方は多いのではないでしょうか。
逆抜き不意打ち斬りはどんな動き?
逆抜き不意打ち斬りとは、どんな動きだったのでしょうか。
動画で実際にぼくがやってみた手法を解説させていただきます。
これはあくまでも、ぼくが動画内で演じてみた手順です。
実際の映画の動きと同じとは断言できないことをご了承ください!
①刀に左手をかけ、腰を引いて抜く
本来は刀は右手で抜くのですが、この動きでは左手を刀にかけています。
この動きは、胸を斬りながら左側に振り抜くため、左手で抜く方が都合が良かったのだと思われます。
左手の指は握りすぎないようにしながら刀の持ち手をフワッと浮かせ、
浮いた刀が下に落下し始める時、その勢いに合わせて左手を軽く握って抜きます。
同時に、腰をくの字に折り曲げるようにすることで、鞘から刀が抜けていきます。
刀を抜く際は腕だけではなく腰を引くことで、鞘が後ろに、刀が前に移動するため抜きやすくなります。
これは『鞘引き』といい、抜刀において大事なポイント。
この動きでは、腰を曲げて鞘を引き、左手を突き出すことで刀を抜いています。
ただし、動画で使った刀は脇差といってかなり短い刀です。
実際に三船敏郎さんが使った刀は通常の刀より15cmほど短い程度のものだったとか。
それでも脇差よりは長く、スムーズに抜く難易度はもっと高いですね。
②手首を返して、刃を相手に向ける
刀が抜けたら、手首を少しひねるようにして刀の刃の向きを相手に向けます。
ここまででは、左手は刀に軽く添わせながら引っ掛けるようにして抜いていました。
握りしめると刀がガッチリ固定されてしまい、自由度が損なわれるためです。
そして、刃を相手に向ける過程で初めて刀をぐっと握ります。
つまり、刀に手をかけてから抜き放ち、向きを変えるまでをワンセットで行いたいわけです。
はじめに指を引っ掛け、
指を添わせてしっかりと握る頃には刀が抜けて刃の向きが相手に向けてセットされている。
手の自然な動きと刀の挙動を連動させるのがぼくの中での理想です。
この段階で刀は抜けており、相手に刃が向いている状態。
ここから、『斬る』という動作に移ります。
③右足を前に出し、左手を引き右手を添えて斬る
この段階では左手が突き出され、腰がくの字に曲がった体勢になっています。
ここから右足を一歩踏み出します。
この技では相手の左側に一気に抜けたいので、右足はナナメ左に踏み出します。
踏み出し始めと同時に、右手の甲を刀の『峰』に添わせて固定します。
あとは、右足が前に大きく踏み出されるのに合わせて、刀を握った左手を身体側に引き寄せ右手を前に突き出します。
こうすることで、刀が身体の前で回転したような軌道を描いて、下から斬り上げるような挙動になるのです。
他チャンネルでも逆抜き不意打ち斬りに挑戦した人は多い
以上が、ぼくが動画内で行った『逆抜き不意打ち斬り』の手順ですが、
YouTubeでは他にも、この技にチャレンジした方の動画がいくつかあります。
人によってやり方も様々です!
実際の映画で三船敏郎さんがどのように動いたのかはハッキリとは分かりませんが、
色々な方に『やってみたい!』と思わせる魅力的な技なのは間違いないですね。
逆抜き不意打ち斬りが生まれた経緯は?
逆抜き不意打ち斬りが生まれた経緯について、ふた通りの逸話を聞きました。
- 三船敏郎さんが自分で演出
- 殺陣師の久世竜さんが発案
一つは三船敏郎さん自身が、このシーンを演出したというお話。
もう一つは、殺陣師として参加なさった久世竜さんが発案したというお話です。
人によって諸説あるため一概には言えませんが、
ぼくは三船敏郎さんと久世竜さんの二人で意見を擦り合わせて生まれたと考えています。
というのが、敵役の仲代達矢さんがひたすら一人で練習させられていたという逸話があるのに対し、
三船敏郎さんは殺陣師やスタッフの方と訓練していたとのことです。
もちろん意見交換やディスカッションは行われたでしょうから、
三船敏郎さんと久世竜さん双方が意見を出し合ったのではないかと思います。
とするならば、三船敏郎さんが演出したという説も、久世竜さんが発案したという説も矛盾はしないと考えられます。
参考にした『弧刀影裡流』とは?
逆抜き不意打ち斬りの動きは
『弧刀影裡流』という居合の流派を参考にしたと言われています。
これは、九州出身の剣士である『野瀬庄五郎』という人物が、西南戦争の経験をもとに編み出したとか。
これ以外に詳しい記述は見つけられていないのですが、
実はもう一つエピソードがあります。
それは『殺陣師の久世竜さんが発案した流派』という逸話。
それについては、こちらのサイトで紹介されています。
サイト内には、久世竜さんの発言が記載されています。一部引用します。
殺陣はこうして複雑な仕事でありながら殺陣の流儀というものがない。
私は自分なりの流儀を作らなければ、殺陣の個性がなくなると思ったので、流儀を作っている。
その名称は弧刀影裡流という。
真相のほどは分かりませんが、この一文は国会図書館で管理されている論文の中にあると思われます。
あながち、根も葉もないハナシという感じでもなさそうです。
ただ、多くは『野瀬庄五郎が編み出した流派』というのが定説のようですね。
逆抜き不意打ち斬りは『空手』に近い動きをしている?
逆抜き不意打ち斬りの動きは、左手で抜いた刀を突き出し、それを再び身体に引き寄せると同時に右手を突き出して斬ります。
初めて見た時に感じたことですが、
この動きは空手の『上段受け』に近いものを感じました。
上段受けも、前に出した手を引き寄せ、もう片方の手を頭上手前に振り上げて受けるといった動きをしています。
三船敏郎さんの動きも詳細までは分かりませんが、映像を見る限りではこの原則を外れていないように見えます。
野瀬庄五郎という剣士が編み出したにせよ、久世竜さんが立ち上げた流派であるにせよ、
弧刀影裡流という流儀の動きには、空手に近い動きが含まれているのではないでしょうか。
また、余談ですがぼくの中では空手は琉球(沖縄)のイメージが強くあります。
その琉球空手は「薩摩示現流」という剣術の流派の影響を受けているそうです。
薩摩は鹿児島県あたりの位置にあり、
「九州」の剣士である野瀬庄五郎とつながりがあるのでしょうか…?
まだまだ、研究の余地はありそうです。
まとめ:椿三十郎ラストシーン|逆抜き不意打ち斬りのエピソード
今回は、YouTubeで公開した『椿三十郎のラストシーン考察』の動画をさらに詳細に解説しました。
椿三十郎ラストシーンには、逸話がたくさんあり真偽不明のものを見受けられますが、
それだけ伝説がたくさん生まれるシーンであったことは疑いようがありません。
ぜひ、椿三十郎を観たことがない方はご覧になることをオススメします!
今回はここまで!
最後まで読んでいただき!ありがとうございました!
YouTubeの動画でも、実際に実演していますので是非是非ご覧ください!
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